アメリカの新しい駐日大使のキャロライン・ケネディ氏が19日、皇居で、オバマ大統領からの信任状を天皇陛下に手渡す「信任状捧呈式」に臨みました。
先週来日したアメリカの新しい駐日大使で、故ケネディ大統領の長女のキャロライン・ケネディ氏は、19日午後3時すぎ、東京・丸の内のオフィス街で宮内庁が差し向けた儀式用の馬車に乗り込みました。
「信任状捧呈式」は、日本に着任した外国の大使が本国の元首からの信任状を天皇陛下に手渡す儀式で、憲法で天皇の国事行為の1つに定められています。
馬車列は、警察の騎馬隊の先導で皇居前広場を通り抜け、ケネディ氏は、広場に集まった大勢の人たちに、馬車の中から笑顔で手を振っていました。
そして、二重橋を渡って皇居宮殿の南車寄に到着すると、出迎えた宮内庁の幹部に案内され松の間での捧呈式に臨みました。
式では、ケネディ氏が天皇陛下の前に進み出て、「自分の信任状と前任者の解任状を奉呈する光栄を有します」と述べ、オバマ大統領からの信任状と前の大使の解任状を手渡しました。
天皇陛下は、それらを岸田外務大臣に手渡したあと、ケネディ氏とにこやかに握手をしてことばを交わされたということです。
馬車での送迎は世界でも数か国
信任状捧呈式での皇居の送り迎えは、大使の希望で馬車か乗用車かを選ぶことができます。
このうち馬車による送迎は、世界でもイギリスやスペインなど数か国でしか行われておらず、大使就任の記念になることなどから、ほとんどの大使が馬車を選ぶということです。
使われる馬車のほとんどが、明治の終わりから昭和の初めにかけて当時の宮内省の工房で職人の手によって作られたものです。
車体は漆塗りで、内部にも象牙の装飾品が用いられるなど美術的な価値が高く、天皇の即位や皇族方の結婚などの重要な儀式の際にも使われます。
今は工房は無くなり、新しい馬車を作ることができないため、宮内庁は10数年ごとに車体の漆を塗り替えるなど手入れをしながら大切に使っています。
一方、馬車を引く馬は、栃木県にある宮内庁の御料牧場で育てられ、一定の大きさに成長すると皇居内に設けられた飼育施設に移されます。
皇居には馬場もあり、現在は、皇室の儀式や伝統的な馬術に使われる33頭の馬が、平日のほぼ毎日、宮内庁の専門の職員による訓練を受けています。
馬は性格が臆病なため、職員らは、儀式の最中に沿道の車や人に驚くことがないよう、道路に面した皇居前広場で練習用の馬車を引かせる訓練なども取り入れて本番に臨んでいます。
馬車列は、大使や随員の乗る馬車や、先導や護衛にあたる警察の騎馬隊など、最大で15頭の馬と3台の馬車からなり、宮殿までのおよそ1キロの道のりを時速10キロほどのスピードで走り抜けます。